はいどうも。懐かしい話をしますね。
Outlines
アドテクノロジーには夢があった。
「枠から人へ」を掲げ、オーディエンスターゲティングによる精微なターゲティングと、カルーセル・動画・ActionInAdsなどによる創造性にあふれたクリエイティブの配信、天気や位置情報、気温、株の値動きなどリアルデータを反映させた入札戦略、夢があった。毎月のように新しいDSPがリリースされ、猫も杓子もDSPだった。
GREE、楽天、mixiも、そりゃあもうDSPだった。
結果はどうだろう。使えるプラットフォームといえば?
そうですね。
Criteo、Google、Facebook、Amazon。独立系DSPでいえば、フルカスタマイズの利くThe Trade Desk?
うちは、CPAだからさ。
「枠から人へ」は、いまだに景気のいいYahoo!のブランドパネルが証明するように結局「枠」だったし、さまざまなクリエイティブは、結局リーセンシー爆切りしたダイナミックリターゲティングだった。だってCPAなんだもん。
そんな3年だったと思う。
続いて来るアドテクの夢はなんだろう、Ad fraud?Ad verification?
否、データエクスチェンジなんだそうだ。個人的には、これも3年前の夢だけど。
ブロックチェーンによる企業機密データ流通PF「Datachain」が夢想する、アドテク次のビジネスモデルとは?
http://thebridge.jp/2018/02/datachain
Datachainの考え方はこの特定企業が保有する極めてユニークなデータ(会員データや場所など)を企業を超えて流通させることができないか、というものになる。
冒頭の例で言えば、レストランオーナーが地域の大手デベロッパーが保有するユーザーデータを活用してマーケティングを実施する、といった具合だ。
いわゆるデータエクスチェンジ。企業やメディアがそのオーディエンスデータをマーケットプレイスに出品し、利用者は配信ターゲティングやユーザーの分析を目的に購入する。よくある、ただ、スケールはしていない。
なぜなら、効果が合わないから。この一択だった。
当時は30日のCookieなんかも売っていたけれど、配信においてデータの鮮度としては低すぎる。当時ですら、だいたいの購買活動において、ユーザーはデジタルデバイスのうえで30日も迷わない。30日以内に意思決定は終わっており、そのスピード感に、広告が付け入る隙はない。
会員データなんかも取引はあったが、流通量はそこまで大きくなれない。
海外を見てもBluekai、krux、Bizoという当時世界でも大手となったデータアグリゲートベンダーは、さらに大き目なデジタルマーケティングベンダーにゴールインしている。(Oracle、Salesforce、LinkedInなど)
結局は、オーディエンスデータは「ぜいたく品」だったのかもしれない。
3年前の轍を踏まないように
今回、このDatachainが3年前のそれと異なるのはよりクリティカルなデータ(特定個人や企業の会員データなどに近い)ものを、機密性を高めたプラットフォーム上に流通させようという点。
トークンエコノミーを置くのも、それはそれで面白いけど、そのトークンにどういった価値が付くかがまるで想像できない(結局は換金されそうなので)し、利用促進ではなくてパフォーマンスの向上がよりクリティカルなイシューになると思うので、あんまり考えは廻らない。
本文中では「中小企業社が大手の会員データを使ってターゲティングする」とあったけど、個人的にはターゲティングにこのデータを活用する分、配信コストはかさむわけで、そうなるとROIとしては悪いほうに倒れやすい、と経験則から思っている。
ROIを重視しない、「配信したことに価値があるんだ」とか「売上につながらないけど見えない効果があるはず」といったタイプのマーケティング戦略であれば使うのかもしれないけど、はたしてそんなクライアントが国内にうじゃうじゃいましたっけ。
個人的には、当時は米国のDatacorpとか、「情報銀行」なんていう概念が面白いと思っていたし、企業のマーケティング戦略に新たな課題をたたきつける要素として、なんならまだ面白いと思っている。
ターゲティングに用いられるパーソナルデータも、やっぱり民主化したほうがいいんじゃない?っていう。
アドテクはそろそろアドテクをやめてもいいんじゃないかな
アドテック東京も、九州も、最近はどうなのかな。
去年のは参加企業を見るに「コンテンツマーケティング」と「インフルエンサーマーケティング」がすごく強かったように思っているんだけど、これはアドテクだったっけ?
結局、アドテクを殺したのは国内の在庫つなぎこみ戦国時代によるコモデティが巻き起こした媒体インベントリの管理不足とSSP-DSP間のオークション環境の均質化、広告主側の投資理論の進化不足とそれによる直接効果偏重の最適化だったと感じる。
そもそもデジタルマーケティングにおける課題解消のために頑張る、他社にできないことをやってブレイクしたいのであれば、出てくるべきツールやソリューションは成熟しきった狭い「アドテク」ではなく、「データに基づいたマーケティング手法の提案」なのだが、国内市場では「アドテク」という肩書が異様に強い。これ自体が、アドテクの首を絞めることにならなければいいなあと思っている。
ちょっと懐かしかったから、勢いでつい書いちゃった。
なんつって。