月曜日ですね、どうもおつかれさまです、筆者です。
インターネット専業広告代理店の雄、サイバーエージェントさんが、ここ最近アクセル全開なプレスリリースラッシュなので、ちょっとまとめてみたいとおもいます。
あくまで外から見た筆者の推測なので、どこまで真かは置いておいて、参考になれば幸いです。
Outlines
何が起こっているのか
主旨としては、社長の藤田さんも仰っていますが、「事業(収益)の多角化」がメインテーマになるかと思っております。
分かりやすくいってしまえば「脱・ネット広告代理業依存」というステージなのでしょう。
結局、そういうのは決算資料を見てしまえば一発でわかりやすかったりするんですが、
ここでは主にインターネット業界に身を置いている筆者が、遠くや近くから聞こえてくるサイバーエージェントさんのブレイクスルーを、創業当時から振り返っておおざっぱに4段階に分けて説明していきます。
インターネット企画営業から始まるサイバーエージェントさんの沿革
サイバーエージェントさんの沿革としては、1998年に創業、当時は「インターネットを中心とした企画営業」という立ち上がり方でした。その年のうちにバリュークリック(その後”サイバークリック”として自社製品化)をはじめとしてインターネット広告業界に参入します。
このサイバークリック、今でこそ一般的にはなっていますが、当時は斬新なクリック保証型のバナー広告でした。昔からサイバーエージェントは常識や市場にとらわれず、顧客の要望に本質的に応えた商品開発や企画に秀でていたのでしょう。
ちなみに、このサイバークリックをはじめとしたサイバーエージェント社の自社商品の開発を行っていたのが”オン・ザ・エッヂ”社。後にあのライブドアとなる、ホリエモンこと堀江貴文さんの会社ですね。このインターネット黎明期からこんなにガッツリ組んでやってたら、そりゃあ仲もいいわけですね。納得。
「自社メディア事業」という第2のブレイクスルー
インターネット広告代理店として急成長をはじめる一方で、2004年に新たな事業を展開します。それがAmebaです。
この「インターネット専業広告代理店のサイバーエージェント」が、「自社メディア事業アメーバブログを解説する」というニュースは、実は広告業界ではかなり驚かれました。
というのも、外部のメディアを”代理”として扱う広告代理店のビジネスモデルにおいて、自社メディアというのはそのままクライアントへの提案(メディアプラン)において競合化する、と考えられていたためです。
というのも、代理店も結局は”代理業”、クライアントから支払われた広告費用の大部分は、広告が掲載されるメディアに入ります。代理店が受け取れるのは”マージン”と呼ばれる手数料のみになるわけですね。
となると、自社で運営するメディアというのは他の外部メディアに比べて極端に利益率が高くなるわけですね。
この力学が働くと、代理店のメディアからの評判やクライアントからの信頼感(利益率が高いから自社メディアを提案しているように見える)のため、規模で先行する総合代理店も、自社メディア事業というのはなかなか手を出してきませんでした。
しかし、藤田社長は「広告代理店業だけではなく、(将来的には)総合的なインターネットサービス提供会社を目指す」という経営プランのもと、苦しい時期もありましたが、このAmebaも重要な事業と位置づけて投資と拡大を続けてきました。
個人的には、「自社商品開発+強力な営業」というブレイクスルーに続き、「自社メディア事業の開始」が第2のブレイクスルーのように思えます。
第3のブレイクスルーは「スマートフォン×課金ビジネス」
広告顧客のデジタルマーケティングを推し進めながら、自社においてもメディア事業を開始したサイバーエージェント、そうなると顧客へのマーケティング価値創造として試行錯誤してきた「グロース(サービスを育てる)ノウハウ」と「Ameba会員基盤」という要素が揃います。
また、時代はスマートフォンシフトのタイミング。これにより(広義の)Eコマースへの心象的なハードルが下がり、ユーザーを満足させられる体験やコンテンツを提供することで、インターネット上でも課金ビジネスが成り立つようになってきます。
ここでスマホゲーム事業をビジネスチャンスととらえ、投資拡大を推進します。
神撃のバハムートやグランブルーファンタジーなどのスーパーヒット作を生んだCygamesのほか、数えきれない制作子会社やタイトルを世にリリースしました。また、課金ビジネスとしてはいわゆる出会い系と呼ばれるデーティングサービス「タップル誕生」およびその他多数(ほんとにいっぱい)、記憶に新しい”音楽のサブスクリプション”市場に向けてリリースをしたAWAなどがリリースされました。
広告以外の収益モデルの可能性にいち早く巨大な投資をし、わずか数年で収益の柱に仕立て上げたのは本当にすごい。特にCygamesなんかは本当に信じられない利益を叩き出してますからね、ごいすー。
そして今、第4のブレイクスルーをめざしエンタメ領域に攻勢をかける。
昨日、10月2日だけでも、インターネット広告事業外のプレスリリースが目立ちます。
インターネットテレビ局「AbemaTV」が「AbemaTV Data Labs」を設立 蓄積されたビッグデータを番組制作や番組編成、広告配信に活用する体制を構築
このたび設立した「AbemaTV Data Labs」は、2016年4月の開局から1年4か月で2,000万ダウンロードを突破し、右肩上がりで利用者を伸ばし続けるインターネットテレビ局「AbemaTV」における利用者の視聴ログやコンテンツを分析することで、「AbemaTV」の機能拡充や番組、広告配信などに活用することを目的とした組織です。
仮想通貨取引事業子会社 株式会社サイバーエージェントビットコインの設立について
近年、ビットコインをはじめとする仮想通貨の利用者が急増し、2017年10月から仮想通貨取引所が登録制になるなど、その社会的関心は高まっております。このような現状を背景に、当社では新たに仮想通貨取引事業へ参入し、新会社の株式会社サイバーエージェントビットコインを通じて、仮想通貨交換業者への登録を進め、仮想通貨取引所の新規運営を来春(予定)に開始いたします。
という2件のプレスリリース。また、先日を振り返ってみても
DDTプロレスリングのサイバーエージェントグループ参画に関するお知らせ
当社はテレビ朝日との共同事業であるインターネットテレビ局「AbemaTV」を運営し、オリジナルのニュース番組・バラエティ番組のほか、将棋や麻雀、格闘技、ゴルフなど多彩な専門チャンネルを提供しております。近年のプロレスブームの再来を追い風に、DDTプロレスの試合を「AbemaTV」を通じて配信し、幅広い方にプロレスの面白さを伝え、DDTプロレスに所属するレスラーの認知向上を図ることで、さらなる団体発展を目指すという共通目標のもと、このたび当社とDDTプロレスは同社のサイバーエージェントグループ参画について合意するに至りました。
サイバーエージェントが「新R25」をプレ創刊 若手ビジネスパーソンのための“世の中がわかる”トレンド解説メディア
「新R25」は、フリーマガジン「R25」が「R25世代」と定義していた25歳~30代前半の若手ビジネスパーソンをターゲットに、彼らにとって有益な世の中のトレンドを深掘りし、身近に届けるWebメディアです。提供ジャンルはビジネスからエンタメまで多岐にわたりますが、スマートフォンおよびソーシャルメディア全盛の現代に最適化した「スキマ時間に消費でき、満足できる学びのあるコンテンツ」を提供していきます。今後の本創刊に向けて、配信記事数やカテゴリを拡大していくと共に、メディアのコンセプトを反映した著名人の連載インタビュー記事なども継続的に配信していく予定です。
などなど。
たとえば最初のAbema TV Datalaboの発足、テレビ業界のパンドラの箱とも呼べる、”視聴データ”、クリティカルに視聴者の興味や関心といったインサイトを表すこのデータは広告配信やコンテンツ制作に多大にポジティブな効果を与えると思われます。
既存のマスメディア界隈がこの動きに対応しないのであれば、自分たちでメディアを立ち上げ、メタデータを資産化しようというのは、いかにもサイバーエージェントさんらしいですよね。
従来の広告事業にとっても、さらに投資を広げるコンテンツサプライヤとしての事業にとっても非常に有益な取り組みだと思いました。
2017年の広告業界の流れと未来に備えて
また、そうこうしている間にこんなニュースもありました。
業界第3位の広告代理店アサツーディ・ケイ、業界構造的に首位と2位の電通・博報堂には大きな差がつけられていました。
この買収は投資会社によるものなので、そこまで悲観することもないとは思いますが、とはいっても広告業界には驚きが走りました。
インターネット広告専業の代理店と、こういった総合広告代理店の守備範囲は、昔ほど明確ではなくなってきており、総合代理店はデジタルマーケティングの専門部署を構築し、またインターネット専業代理店は動画広告やブランディング指標の計測管理といった観点から、ブランド系予算にアプローチを図っています。また、第3勢力として外資系コンサルティングファームやツールベンダーなどの参入も見込まれ、さらに当の顧客はというとツールや自社ビッグデータ、専門のチームを駆使したインハウスマーケティング体制への移行が進んでおり、今後激化は避けられない市場です。
そういった市場のなかで、「事業ドメインを限定して商売する」ということが、今後最もリスキーである、と踏み、サイバーエージェント社は名実ともに「総合インターネットサービス企業」を謳い、目指すようになったのでしょう。
有機的に進化していくインターネットビジネスの時流を乗りこなすには、日々蓄積されるナレッジを有用に資産化する事、柔軟な事業ドメインの選択、新規事業を恐れずに推進する事、などが必要になり、またそこに強みを持つからこそ同社はこれだけマーケットのなかで存在感を示しているのだなあ、と感じました。
久々に業界っぽい記事を書きました。
引越しにより遠くなっちゃったので渋谷からは最近離れてますが、あのビットバレー感をまた感じに行ってみてもいいかもなあ。
今後も目が離せませんね。
なんつって。