「流れのはやい業界」というのは、結局「自分がその業界のどこにいるのか」ということとほとんど重なるな、と思っていて。
つまりはどんな業界でも変化はある、その変化は「前からくるもの」と「後ろからくるもの」に二分される。前からくる変化というのはたいてい「新しいもの」がもたらす。後ろからくるものでいうと、「古いものが耐えられなくなる」というケースが多い。
自分はデジタルマーケティングという業界に身を置いている。そして、この業界はとても流れが早いと感じているし、日々その変化に晒されながら、何がプロダクトやサービスのためになるのかということを暗中模索する日々を送っている。
オンライン上での集客という機能を担うデジタルマーケティングという業務のなかに、SEOという手法がある。
Search engine optimization、つまるところ検索エンジン最適化という専門的な業務だ。
これが何であり、何ではないのか、という議論は広告やSNSという他の集客経路以上に語られてきていると思う。
理由は単純で、「正解やGoogleのアルゴリズムを誰も知らない」からだ。
正解を誰もしらないというのがこの業務の専門性と特異さを押し上げている。
なんなら当のGoogle自身も、自社で求人を出し「SEO担当」を求めていたこともある。
そんなSEOがいま、大きく変わろうとしている。これについても正解は誰も知らない。わからないものが、よくわからないんだけど変わろうとしている。
担当者であれば肌感覚で”そんな感じがする”。その共感が広がってきた。
そんな話をする。
Outlines
SEOに訪れる変化
今までのSEOと検索者
前世代の検索者と次世代の検索者を分けるとすれば、デバイスによる物理的な制約条件と検索結果への期待度だと考える。後者は検索エンジンの進化にも強く依存しているが、ユーザーの操作や打ち込む検索キーワードはより少なく、検索結果で答えられる内容はよりディープ&シャープに、「1を聞いて10を」返せるように、各社日々その評価アルゴリズムを磨いている。
また、デバイスの変化も非常に大きな変化だと考える。今までのPCベースの検索動作では、「(ハードウェアとしての)キーボード」があったり、モニターにある程度のサイズと、目との距離が確保できていたり、基本的に座った状態など移動を伴わないシーンでの検索になっていたり、など画面の外に物理的な制約があった。
これが、無線インターネット回線とスマートフォンが普及し、それに合わせて検索行動ごとデバイスシフトしていくとなった今、前提がいくつか覆ることとなった。
入力器官はソフトウェアキーボードや音声、カメラを通した画像情報になり、ユーザーが目にするディスプレイは大きくて6インチ前後、またユーザーはその端末を操作しながら移動したり、何か乗り物に乗ったりする。
mobile firstという大転換
検索結果として提供されるWebサイトの情報フォーマットは、依然としてPCデバイスによる閲覧をベースにして検討されていないだろうか。そのことを、もう一度考え直す必要がある。
Googleが先陣を切って下した判断が、Mobile first indexingだ。
今まで、検索キーワードに対する検索結果としての評価はPCをプライマリ指標として判断していた。PCへのレスポンスはPCのページを見て評価し、スマートフォンへのレスポンスについてもPCページを見て評価し、対応するスマートフォンページを検索結果に返していた。
この評価のプライマリをPCからスマートフォンへ変更する。つまりPCで検索されたものの評価をスマートフォンサイトで行うと言っている。
Mobile First Indexingのアナウンスからおよそ17ヶ月、いつくるのかとSEO担当を震わせていたこの大転換が今春をめどにより進んでいく様相を見せている。
mobile firstからスピンオフしたAMPというテーマ
同時期にSEO担当の耳に届いたAMP(ACCELERATED MOBILE PAGES)。
これはサイトの情報をプラットフォーム側にキャッシュすることで、読み込み速度を劇的に速くするというフレームワークになる。
Googleが主導して進むこのAMPプロジェクトは、まさにモバイルのユーザーは「待てない」ということをその推進の動機付けに唱えている。待てないユーザーはサイトから離脱してしまい、その結果ビジネス的な成果に毀損をもたらす、そう言っている。
一方で、AMP自体の評価は意外と芳しくないことが多い。キャッシュのために本体サイトの更新情報と差分が生まれてしまう点や、現状のAMPの仕様でサポートされていない技術なども多く、スピードを改善するために他のユーザー体験を傷つけてしまいかねない、といった内容が目立つ。
とはいえ、Google自体は追加してPageSpeedを評価アルゴリズムに追加することを公式に発表した。(これは珍しいことだ)
その答えがAMPであったにしろ、そうでないにしろ、ページスピードはモバイルのユーザーエクスペリエンスを語る上で重要だと考えているのは間違いない。
崩れゆく分水領
独自進化するモバイル検索
また、Googleはここにきて新たな声明をブログを通してウェブマスターに発信した。
AMPから得られた教訓の標準化について
we now feel ready to take the next step and work to support more instant-loading content not based on AMP technology in areas of Google Search designed for this, like the Top Stories carousel.
〜日本語版〜
次のステップに向かう準備が整ったと感じています。具体的には、Google 検索用にデザインされたトップ ストーリー カルーセルのように、Google 検索の領域で AMP テクノロジーによらずに高速に読み込めるコンテンツをサポートしたいと考えています。
〜
そのコンテンツは、(1) 一定のパフォーマンス基準とユーザー エクスペリエンス基準を満たし、(2) 一定の新しいウェブ標準を実装することが求められます。
https://developers-jp.googleblog.com/2018/03/standardizing-lessons-learned-from-amp.html
これはつまり、本来の検索評価とはまた別の「良質なエクスペリエンス」へのインセンティブを成立させることを意味するのではないかと考えている。
Google検索結果はこの昨今で非常に激しくそのインターフェースを変化させてきた。単純に検索結果の順位で1位を目指しても、RankingZeroという特設枠もあれば(しかもこのAnswerポジションは最近またさらに拡大している)、Adwordsの掲載件数を増やしてきたという過去もある。これでは単純に既存のアルゴリズムを理解して掲載位置を1位にしても、モバイルの1stViewをキープするのは難しい。
いわゆるWeb検索以外の選択肢
また、Googleはこの調子でいくとモバイル検索の約半数が音声検索(Voice search)になると言っている。日本のプロモーションでも音声を使った検索シーンを喚起するものが多く、またGoogle homeやAndroidデバイスに実装されたGoogleアシスタントによる対話型のソリューション提供などが目立ってきている。
検索エンジン側の「口語文体による入力」の意図の理解度というフィルターも存在するものの、このクエリがどこまで伸長するのか、その際にどうあれば「Voice search experience」に対しフレンドリーなのか、妄想を広げておきたい。
Google以外という可能性について
ビットコインをはじめとした仮想通貨ブームは「Decentralized(非中央集権化)」がもたらす可能性と、透明性、様々なことを民主化することで起こる合理的な進化とその限界について教えてくれた。
法定通貨に対する仮想通過のように、検索エンジンの価値定義に対して民主的なコンテンツ評価の可能性はないだろうか。
その昔、「被リンク」を民主的な評価指標としてその検索精度を飛躍させたGoogleが、その可能性に気が付いていないわけがないが、そういった面について(殊に検索評価判断の透明性について)は、現状、限りなく中央集権的になっている。
たとえば、この非中央集権的な評価がいま成り立つプラットフォームといえば、それはソーシャルグラフを有したSNSになるのではないだろうか。
InstagramはユーザーのDMのやりとりで送られたリンクに関する画像コンテンツをデフォルトで表示している。ジオタグやハッシュタグのページに遷移しても、同様に「人気の投稿」と「最新の投稿」が見える状態になっている。
Instagramは画像に関する評価の集合体でもある、それがユーザーの検索意欲さえ顕在化したとき、有益な”集合知への質問箱”への進化を目指しても、次世代のモバイルユーザーにとっては何も不思議ではないのかもしれない。
次世代のSEO担当者として進化するには
この変化を生き残るには、SEO担当としていくつかの進化の道を選ばないといけないと考える。
Whatの担当者
ユーザーが目的に応じて情報を求めるということを網羅的に把握し、自社のサービスやプロダクトが「どのようなアプローチであるべきか」を設計する。
Howの担当者
Whatを実現するために、技術的に、時には自社の顧客やSNSでエンゲージしているユーザーのアクション導線・ストーリーを半定性的に設計しながら、あるべき姿の体現を行う。
また、そもそもSEOとはまた別のスペシャリティを身に付けることも、施策の幅を広げるために有益であることは間違いない。
特に、ログ解析やインフラに関する知識、UIUXデザイン、ユーザー行動に関するA/Bテストの設計などは、今後間違いなく必須スキルとなってくると言っても過言ではない。むしろ、これらのどれかが検索エンジン最適化と組み合わせて語れないようであれば、3年後も同じポジションにいられるかはわからないと思っている。
広告の領域に関していえば、「アドテクノロジー」の名の下に進化が推し進められ、プラットフォーマーの配信ロジックやダッシュボードがよりスマートになっていくことで全体のパフォーマンスを押し上げた。これにより入札戦略や日々のコストポートフォリオといった計算の作業を省略し、担当者はさらに上流の広告評価の可能性に関する議論や投資ロジックの精査、クリエイティブやブランドストーリーの部分に時間を時間を割くことができるようになった。
とはいえこれは広告という手法が、広告主と配信されるメディア(プラットフォーマー)の間で利害関係で一致しているからこそ進んだ進化である。
検索エンジンのオーガニックなトラフィックでは構造が異なる。自分たちのプレゼンスは、自分たちで向上させていかねばならない。
ここが、SEO担当が一番悩み、苦しむ部分であるのと同時に、わくわくする部分だったりするのだそうだ。
自分は、ぶっちゃけしんどく感じるけども。
なんつって。