広告業界とインターネット広告業界について、飛び込む前に伝えたい。

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遅すぎるってことはないので書き留めておく。

 

哀しい事件が、僕にとってそう遠くない世界である電通さんのデジタル系部署で続いている。

【電通過労自殺】「他社の方がひどいのでは?」現役社員が思うこと

<電通>3年前に過労死 30歳男性社員、労災認定

 

電通さんとはそう遠くない距離にいる、とだけ言っておこうと思う。僕は電通の社員ではないし、グループ会社の所属でもない。

 

今回の件、特に心が痛んだのは、犠牲になった女性と、男性に、それぞれ自分の影が、少しだけ重なってしまった、そして自分はまだ生きている、からでもある。

 

僕は、5年前の4月、まさに新卒の1年目、インターネット広告業界に胸を躍らせて飛び込んだ。

 

いろんな人が最近の件について意見を言っている。

でも中の人として、時折ごっちゃにされている「広告業界」と「インターネット広告業界」はちょっと分けて認識すべきだな、と思ったので書いてみる。

学生が読んでみても、いいかもしれない。

◆どうしてインターネット広告業界に入ったのか

 

志望動機と入社前のイメージ

志望動機はよく覚えている。ぼくは大学生時代に、いわゆる電通さんや、博報堂さんといった大手総合広告代理店業界の人たちと、企画系のNPOで活動していたりした。インターネットは好きだったし、当時(2009年頃)、徐々に日本にも浸透したTwitter・Facebook、そしてスマートフォンが提供するめまぐるしい「ちょっと先の未来」に傾倒していた。

iOSに対抗して、GoogleのAndroid-OSがどんどんアップデートされていくのをわくわくしていた。

 

企画もそこそこに、「インターネットやスマートデバイスに関わる仕事に、最前線で携わりたい」、と思ったし、広告代理店の先輩方は、とにかく面白くて厳しくて、愉快で知的で生産的で、スーパー仕事ができて、超カッコよかった。

何より、「楽しみながら何かする」というのが、めちゃくちゃに上手かった。

こうなりたいな、と素直に思った。

 

スマートフォンと広告、これらの交差点は、きっと面白いことや可能性に満ち溢れているんだろうな、と思い。自身の10年後のキャリアまで見据えて、インターネット広告業界に属する事を決めた。

 

インターネット業界に飛び込んでみてから。

結論から言うと、前職に入社してから3年間、めちゃくちゃに働いた、残業ももちろんした。

100時間ではすまないような時間を、何の対価も評価も得ずに、いわゆるサービスとして業務で過ごした。

(たぶんなんだけど、電通の女の子も、残業100時間とかじゃ全然済まないと思う。)

新卒として配属された時期、ぼくは自分の希望もあり、特に負荷の高いプランニングやメディアの仕入れに関わる部署に配属された。

負荷や専門性が高く、いままでは現場の業務に数年あたってから異動先として検討される部署だったが、新卒を受け入れるのは初めてだった。

 

とにかく、配属されて3か月は、何もかもが意味不明で、何の価値生産もできなかった。

「○○君より文房具置き場のセロハンテープのほうが会社に貢献してるよw」なんていう先輩のジョークも真に受けて泣きそうになってたりしていた。

それでもとにかく働き続けた。今思い返すと理由は2つあると思う。

・周囲の人たちに認められたいし、恩返しがしたい。

できない新人をそのまま放置する職場はそうない。もちろん、その新人の吸収の速さと、教育担当側や周囲の堪忍袋といった変数はあるが、あんまりそのまま放置はない。

なので、新人時代の感情としては「こんなに先輩や周囲が時間をかけてくれたり、気を掛けてくれているのに、自分はこんなにダメダメで…」というものだった。

誰も「よーし、おれはできない新人になるぞお」なんて思って入社してこない。みんな、仕事が出来るようになりたいし、周囲に貢献したり認められたりしたいはずだ。

 

なので、なんとしてでもやりたい、やりぬきたい。そう思っていた。

・成し遂げたい信念があり、必要な経験や負荷だと思った。

 

上記もしたが、自分には自分で考えたキャリアプランがあった。今もあるけど。

何も知らない学生だったかもしれないが、目標を立て、それに向かってこの業界に歩みを進めた。そして、歩み続けた。

幸い、いまはそのプラン通りに、いまなお安定的に、エキサイティングに仕事を続けていられている。本当に3年前の自分の頑張りには、我ながら頭が上がらない。

 

毎日深夜3時に帰宅し、午前7時には起床し、会社に向かう日々もあった。

接待や会食のあと、翌日の朝イチのプレゼンのために資料作りをしにオフィスに戻ったこともあった。気が付いたら外が明るくなっていて、「あれ、なんか徹夜・・・?したの・・・?」と思ったこともあった。会社に泊まったこともあった。

 

それでも仕事を続けた。耐えるべき負荷だと思って。

今思えば、どうかしてたのかもしれないし、とても危険だったのかもしれない。

 

 

「インターネット広告業界」と「広告業界」の違い

これは、これから広告業界や、インターネット広告業界を目指そうとするいろんな人たちに伝えたい。

いわゆる「広告業界」と聞いて思いつくことは、「インターネット広告業界」ではほとんど存在しない。

存在はする、存在はするのだが、ほとんどの人たちはその仕事にインターネット広告という切り口ではありつけないだろう。とぼくは思う。

 

これは、根本的に「広告」と「インターネット広告」の性質や役割が異なるからだ。

いわゆる広告とか、広告代理店で発想されるのは、「いい感じのコピーとかCM」だろう。これらはコミュニケーションプランニングとか、ブランディングとか、コミュニケーションデザインなどと呼ばれていたりする。

ぼくもこの辺が広告だと思っていたし、このへんをやりたいと思っていた。

個人的な話で大変恐縮なのだけど、青春18きっぷの広告クリエイティブはマジで最高に大好きだ。

 

あとは、ルミネさんの女性向けのキャッチ-すぎるキャッチコピーとか、いわゆる感動系動画とか、ああいうクリエイティブで世の中に仕掛けていける系の作品。

 

それらは、インターネット広告の役割には求められていなかったりする。

これは、ビジネスの進化や、デジタルという機能的な特性によるもので、インターネット広告は「ダイレクトレスポンス」、つまるところ投資対効果をより厳密に求められ、そしてその要求に応えていく方へ進化した。

いわゆる広告に比べて「計測や調整、効果の可視化が可能だった」という点によるものであり、広告主としても「効果が見えるので投資判断がしやすい」、代理店やメディアにとっても「効果があればグロス(広告費)が大量にもらえる」ということで、市場はこの進化に対する対抗を持たなかったのでしょう。

効果の向上や精度が増すことは、それ即ち手段としてのインターネット広告の進化であると踏んだ。

 

 

これによりインターネット広告の業務は、入札とクリエイティブといった「運用型広告」による広告の「効果改善」業務が中心となる。

これは、2013年頃から拡大していく話なのだが、「いわゆる広告業界」をイメージしてこの世界に飛び込んでしまうと、そこで拒絶反応が起こることが多いと思う。

なぜなら、これらは数万行にも及ぶエクセルや、緻密に計算された確率論、そして複雑な計算式とA/Bテスト、さらに統計的な分析に基づいた「PC ポチポチ」作業だったりするからだ。

(もちろん、大手アカウントの営業(代理店的にはアカウントエグゼクティブとかいう)になったりすると、正確にはもっと業務内容はことなるわけだけど)

じゃあインターネット広告業界は最悪なの?

もちろん、そんなことはない。そんなことはない!!

インターネット広告の運用や業務でも、学ぶことはめちゃくちゃ多いし、最近はオートメーションや人工知能、高度なアルゴリズムの活用、オフライン接触の計測、自社データのインポートやクロスデバイス計測、統合的な投資ポートフォリオの構築、などなど技術的な進化を総導入した挑戦的な施策を設計&トライするチャンスがあるなど、めちゃくちゃにホットでエキサイティングな領域だと思っている

 

海外の事例を取り入れて、「とにかくやってみようぜ」といった会社や業界を跨いだコラボレーションも多く生まれているし、その辺の業界とは進化のスピードや市場の変化の激しさがまるで異なる。

「2日前は大昔。」そんなのがずーっと続いている。

だから、意識してほしいのは、「ネット業界がクソ。」じゃない。決して。

 

大事なのは、自分にとって何が大事かを知っていること

そう強く思う。

どの業界にもいびつな歪みや歪み(ひずみやゆがみ)があるもんで、それは、人間の顔や性格と同じように、業界の個性なんだと思う。

それを愛せる人もいれば、愛せない人もいるし、許せる人もいれば、許せない人もいる。

愛せない、許せないになれば、その人と距離を取ればいい。

それでも、まだ許せる、まだ愛すべき理由があるのであれば、ちょっと辛抱して、上手く付き合っていけばいいのかもしれない。

 

今回は電通のデジタル広告の部署がいろいろ叩かれていて、安易に「広告代理店はブラックだ」とか「インターネット産業はクソだ」とか、そういう風に言われているけど。

 

大変な思いをする理由や、レールを降りる理由がしっかりあることが、「大変だけどやる価値のある労働」と上手く付き合っていく方法なのだと思った。

 

これが、もう少し前に、該当する何名かに伝えられたら、そう思って筆を執った。

(キーボードだけど)

 

少なくとも、ぼくの関わる範囲の人たちには、伝えていきたいなと。

そう思ったんです。

 

 

 

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