カドカワは2月9日に発表した2016年10~12月期連結決算で、動画サービス「niconico」の有料会員「プレミアム会員」(月額500円・税別)が初めて減少したと明らかにした。
12月末時点で252万人と、9月末比で4万人減った。
とのこと、該当の決算資料。
有料会員の減少自体は売り上げや利益に直接ヒットするのでつらいところ。
概算で500円×40,000人=20,000,000円が毎月なくなる計算。会社規模としてはんー、だけども、成長鈍化ではなくマイナスであり、ボディブローのように効いてきそう。
思ったことがあるのでちょっとメモ程度にかいておく。
◆プロダクトとしての減少ではなくて、ユーザーの分散による減少
なんで減ったの?というのは、特にニコニコ動画側が何かしたみたいな原因じゃないと思ってる。
ネットの高速化、デバイスの普及、コンテンツの充実なんていうのはもうここ10年間くらいは言われ続けているけど、テキスト、画像、音声に続き動画というメッセージフォーマットがどんどん浸透してきていると思う。
そもそもニコニコ動画の変遷を語るのであれば、まずはYoutubeと併せて見る必要がある。
日本では2006年頃にデスクトップ端末におけるインターネット普及に伴い、米国で2005年にローンチされたYoutubeが流行る。
2006年上旬にはYouTubeの映像をブログなどに貼り付け簡単に見られるAPIも公開され爆発的に普及した。日本でもこの頃からブログなどで紹介され人気が上昇した。
上記のように徐々に注目を集めたが、大量のアダルト動画がアップロードされはじめたことが問題となっていたが、人的リソースの問題から厳密な処理ができず削除対応がゆるやかであり、
それがかえって利用を増やすこととなった。
というような感じで、今よりも人的なリソース起因でコンテンツアップロードに対する意識が緩かった。
とはいえ、指摘や削除みたいなものはイタチゴッコであり、違法動画見たい側と取り締まりたい側のぐるぐるがあるものの「怒られても気合の抜ける感じ」といった背景で命名をされたニコニコ動画が、徐々に違法動画のユートピアみたいになってくる。
さらに動画にコメントを入れながらみんなで視聴する、といった次世代型のお茶の間感もウケにウケ、詳細は後から明らかにされてきたが、当時のサービスとしてはかなりの急成長を遂げることになった。
自分が大学生の頃なんかは時間さえあればニコニコ漬けになってる男子大学生がとにかく多かった。
またニコ生、実況、歌ってみた踊ってみた、などといった個人アップローダーのタレント化も進み、「参加型・ネット・動画」といったイメージで見る側も見せる側も一大コミュニティや登竜門として認知を広げていった。
ここで結構Youtubeとの差別化も結果的に出てきたんだとおもう。いわゆる「ニコニコ文化」とか「ニコ厨」みたいなアレだ。
この時まだ、国内においてあくまでYoutubeは「動画をネットで見るもの」にとどまっていたように思う。
そして遅れること約10年。AbemaTVが登場する。
機能やコンセプト、歩んできた歴史などに違いはあれど、「ネット・動画」といった切り口で重複するターゲットはあり、少なからず分散はしたんじゃないかと思う。
市場が小さくなったり、一強時代での純減ではなく、あくまで分散。と筆者は考える。
◆ユーザーの年齢からみたとき
ニコニコのユーザー層はこんな感じ。
niconicoの総ユーザー数(ID発行数)は6210万人で、男性が66%、女性が34%。年代別では20代が最多で40.2%、30代が次に多く23.8%となっている。
”
AbemaTVではこんな感じとのこと。
利用者の構成は、18-34歳が60%以上を占めて、若年層の利用が増加している。
「開始直後は30-40代男性が多く、我々が作っているということもあるし、釣り、麻雀など揃えていたからそうなってしまった。
5-6月では当初の目論見通りに10~20代が増えて、狙っていたF1層(18-34歳)で6割強になった。
この後、時期的には若年層の夏休みなどにヒットしていて、もちろんそういったシーズンを加味したコンテンツの展開で上手くユーザーをかき集められたと考えられる。
それぞれ得意不得意はあれど、基本的に「コンテンツを提供するプラットフォーム」なので、そのユーザーの多寡は原則的に「提供するコンテンツ」に依存する。
また、今回の場合、双方のサービス利用に競合排他の思想がないため、重複するユーザーもいるのだろと思う。
◆これから
そもそもプロダクトの持つ文化や哲学が異なる。なのでそれぞれがインターネットでの動画提供というマーケットで、それぞれ成長していくのだろうと考える。
特にニコニコの持つ「参加型」「スターダム感」「運営との距離感」「ワンチャンある感」はかなり独特で、その他のサービスで再現するのはかなり難しいと思われる。
この役割を強めていくことが、動画の作り手というAbemaTVがまだアプローチし切れていない領域でプレゼンスを高める最短距離に思う。ニーズもあるだろうし。
独特な、インターネットを使うときに誰もが抱えるアングラ感というか闇にするりと入り込んでくる感じ、ネットの可能性とでもいうべきか、セカイ系な期待を持たせるそれは、そうやすやすと取って代わられたりなくなりはしないだろう。
これからも参加型のコンテンツ製造プラットフォームとして、いろいろな可能性が飛び出てくるのをちょっと遠くで楽しみにしたいな。
なんつって。
参考:
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1011585.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/YouTube
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